なめらかな木肌と美しいフォルムが魅力、「柴田慶信商店」の大館曲げわっぱ

曲げ物に魅せられて50年以上、創業者・柴田慶信さん

東北を代表する伝統的工芸品のひとつとして知られる、秋田県大館市の「曲げわっぱ」。その作り手としてまず名が挙がるのが、天然杉を使った曲げわっぱの製造・販売を行なう「柴田慶信商店」です。創業者の柴田慶信(しばたよしのぶ)さんは、もともと営林署に勤務していました。木に触れる仕事をするなかで、身近な暮らしのなかにあった曲げ物に注目。文化や産業として長く続いていくものだと確信をもち、曲げ物作りの道に入ることを決意しました。まずは、いろいろな曲げ物を手に入れては分解してその仕組みを理解し、独学で技を習得。1964年に独立して自身の工房を開きました。

周りの人から「曲げわっぱを作るために生まれてきたようだ」と言われるほど、慶信さんは大の曲げ物好き。国内はもちろん海外にも足を運び、たくさんの曲げ物を収集してきました。多種多様な曲げ物に触れて学んだことが「柴田慶信商店」での曲げわっぱ作りに生かされていて、“曲げ物自体が私の師匠のようなもの”と語ります。

弟子たちのチャレンジを厳しくも温かい目で見守る

慶信さんは、弟子たちにあまり口を出さず、見て学ばせるのがモットー。失敗を恐れずに取り組むように、そして「お金を払って買う価値があるか」を常に問いながら作業をするようにと伝えてきました。時には厳しく言うこともあるそうですが、弟子たちを見つめる慶信さんの眼差しは愛情に満ちています。

現在工房は、慶信さんの三男で2代目となる昌正(よしまさ)さんが跡を継いでいます。2018年8月には新たな取り組みとして、曲げわっぱの職人技を体感できる複合施設「わっぱビルヂング」がオープン。曲げわっぱの展示販売や制作体験を行なうスペースのほか、慶信さんの曲げ物コレクションを展示する「世界の曲げ物ミュージアム」もできる予定です。