銘酒「会津中将」を醸造する、会津若松の老舗酒蔵の杜氏・林ゆりさん

女性の感性を生かした優しく繊細な味わいの「ゆり」を醸す

会津若松市の中心部に蔵を構える鶴乃江酒造は、創業200年以上になる老舗酒蔵です。その7代目当主の娘として生まれたのが、林ゆりさん。東京農業大学を卒業後、「家の役に立てれば」という気持ちから、実家の鶴乃江酒造に就職。当時、すでに杜氏の資格を有していた母・恵子さんやベテランの杜氏と一緒に、女性中心で初めて醸造した「ゆり」を作り、若手女性杜氏として一気に話題を集めました。

「女性杜氏、というとまるで私が中心になって「ゆり」を作ったかの印象を持たれるんですが、私はあくまで一蔵人です。実際に酒造りの中心になるのは、ベテランの杜氏たちです」と林ゆりさん。ただ、林さんが加わることで、くせのないきれいな甘みと優しい口あたりが特徴の酒に仕上がったのも事実。「ゆり」は評判となり、現在「会津中将」と並び、鶴乃江酒造の人気銘柄になっています。

昔ながらの製法にこだわった鶴乃江酒造の酒造り

1794年に創業した鶴乃江酒造は、近代化が進む酒蔵が多い中、手作業が多い昔ながらの製法で酒造りをしています。「蔵内も狭いですし、昔のまま造るしかないんですよ」と笑顔で話す林ゆりさん。仕込み水も、昔と変わらず敷地内の井戸水を使っています。そうした変わらぬ製法、変わらぬ味が評価され「会津中将」は、全国新酒鑑評会で7年連続金賞を受賞。酒好きを中心に、全国的にもその名はよく知られています。

林ゆりさんは、酒造りの中で洗米と蒸米を担当しています。いい蒸米がなければ、よい麹もよい酒もできません。毎年、酒米の出来は異なり、その日の天気や気温によって蒸し方も変えていかなければならず、大変な作業です。「だからこそやりがいもある」と林ゆりさん。今後も地元産の酒米を使った、会津ならではの味の日本酒を造り続けていきたいと力強く話していました。