日本茶の価値と魅力を発信し続ける、「茶匠 矢部園」代表・矢部亨さん

日本茶のプロフェッショナルが手掛ける最高の一杯

宮城県塩竈市にある「茶匠 矢部園」は、創業から80年以上続く老舗茶舗。宮城県下唯一の茶畑・石巻市桃生町の茶葉を使った「伊達茶」の開発や、JR東日本「TRAIN SUITE 四季島」の車内サービスとして自社の4種の茶葉が採用されるなど、今、全国から注目を集めています。

「茶匠 矢部園」の3代目・矢部亨さんは、茶専門経営士「茶匠」の資格を持つ日本茶のプロフェッショナル。上質なお茶を生み出すには、茶の樹を育てるための土づくり、そして茶の樹との対話が大事だと話します。「まず、生産地によって土の香りが違うんです。その香りは葉にも宿り、それがお茶の特徴になります。茶農家は日々土や茶の樹の状態を見極め、手を掛けなければならない。十分なケアをしながら大切に育てた茶の樹のお茶は本当においしいんです」。茶の樹にも寿命のようなものがあり、時には休息が必要なのだそう。愛情を注いで茶の樹を育てる生産農家をはじめ、茶葉の価値を理解する茶問屋、その魅力を発信する茶舗、この3者の存在が、おいしいお茶を世に送り出すためには必要不可欠なのです。

「茶匠 矢部園」が手掛けるお茶は、「伊達茶」以外はすべて静岡県相良町の茶農家から仕入れ。茶農家と茶問屋は共に、「茶匠 矢部園」の創業者である矢部さんの祖父の代から付き合いが続いています。「生き物と同じく茶の樹には命があります」と話す矢部さん。茶の樹を慈しむ心をもつ3者がそろっていることが、「茶匠 矢部園」のお茶のおいしさの秘訣なのかもしれません。

日本茶の価値を再認識する、多彩な楽しみ方を提案

「日本では、お茶が“ついで”のような扱いをされているように感じます。レストランでも当たり前に無料でお茶が出されるから、“とりあえずお茶”というように言われてしまう。“ぜひお茶を飲みたい”、そんなふうに意識が変わってほしいと思います」。お茶の本来のおいしさと価値を広めるため、これまで矢部さんはさまざまな楽しみ方を提案しています。その一つが、急須に水と氷で淹れる冷たいお茶「氷水仕立て(ひょうすいじたて)」です。低温の水で淹れるとカフェインがほとんど抽出されず、お茶の旨みがぐっと引き立つのだそう。ほかにも、「氷水仕立て」のお茶をさらに気軽に楽しめるティーボトルの開発や、ペットボトル入りのお茶のプロデュースなど、おいしい日本茶を広めるためのアイデアは底を尽きません。

真心が込められたお茶は、これまで感じたことのない感動を与えてくれます。心ゆさぶる本物のお茶と出会いに、「茶匠 矢部園」へ出かけてみてはいかがでしょうか。