すべて手作業で行なわれる「イタヤ細工」は、角館で200年以上続く伝統工芸

古くから人々の暮らしの中で使われてきたイタヤ細工

武家屋敷が多く残る歴史ある町、角館。町内の雲然(くもしかり)地区に200年以上前から伝わるのがイタヤ細工です。国内各地では古くから「竹細工」が広く普及していますが、かつて竹の自生がなかった角館では、独自に竹の替わりにイヤタカエデを用いた農具や日用品が発展していったのではと推測されています。観光客が多く訪れる武家屋敷のひとつ「松本家」の母屋で、「イタヤ細工」の実演販売をしているのが菅原清澄さん一家。軒先にはカゴやザルなどたくさんのイタヤ細工が並んでいます。また、イタヤカエデを裂いたり編んだりといった見事な手さばきを、近くからじっくり見学することもできます。

イタヤカエデを見事な手さばきで編んでいく

イタヤ細工は、山から採ってきたイタヤカエデの幹を帯状に裂くことから始まります。次に1ミリメートル以下の薄い板に削り出し、しなやかな材料に加工。「材料となるイタヤの帯は、幅が何センチメートルという決まりはありません。だいたいこのくらいの幅…と目分量で作っている。長年の経験と勘が頼り」と笑顔で話す菅原さん。そうしてできあがったイタヤの帯を、思い描くデザインに合わせ編んでいきます。作る製品に設計図はなく、勘を頼りに驚くほどの速さで手をよどみなく動かし編みます。菅原さんがイタヤ細工を始めたのは38歳の頃。職人のスタートとしては早くはないですが、幼い時から父の仕事を見ていたので、スムーズにイタヤ細工の道に入れました。他の仕事を経験したからこそ得た自由な発想で、イタヤ細工の新作などもデザインしてきました。