創業350年、「津軽打刃物」の歴史と伝統を守り次世代へ受け継ぐ職人親子

後進の成長を力強く支える第7代・吉澤俊寿さん

江戸時代初期、城下町として栄えた青森県弘前市。「二唐刃物鍛造所」は、この地を治めた津軽藩の任命により、歴代の藩主や武士が使う刀や鉄砲などを製造してきた「津軽打刃物」の名門です。時代が変わった今もその伝統を受け継ぎ、包丁を中心とした刃物造りのほか、鉄加工の技術を生かし、伝統の夏祭り「弘前ねぷた」の骨組みの制作や建築物の鉄骨製造なども手がけています。

社長の吉澤俊寿さんは「二唐刃物鍛造所」の第7代。昔から不器用でものづくりは苦手だったそうですが、「自分の代で途絶えさせるわけにはいかない」と、刃物造りのかたわら、経営の安定化を図るために鉄構事業の基盤を強化したり、海外進出を見据えて国際的な見本市に出展したりと、たゆまぬ努力を続けてきました。近年“日本のものづくり”に対する関心が高まるなか、刃物造りの未来にも確かな手ごたえを感じているといいます。

確かな技術で未来を切り拓く第8代・吉澤剛さん

現在、刃物造りのほとんどは、俊寿さんの長男で第8代の剛さんが担っています。剛さんは地元の工業高校を卒業後、一般企業に勤めていましたが、2011年に第6代が亡くなる際に遺した「剛に跡を継がせなさい」という言葉をきっかけに家業を継ぐことを決意。俊寿さんのもとで修業を積み、3年ほど前から本格的にバトンタッチしました。「剛には刃物造りのセンスがある。彼に任せれば間違いない」と、俊寿さんは全幅の信頼を寄せます。

2017年に剛さんは、自動車メーカーが主催する「Lexus New Takumi Project」で注目の若手職人の1人に選出されました。穏やかな笑顔が印象的な剛さんですが、いざ刃物を前にするとキリッと引き締まった表情に。「今後は“二唐”のブランドを確立して、どんどん世界に広めていきたい」と、熱い想いを胸に秘めています。